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最高裁判所第二小法廷 昭和33年(オ)809号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人前尾庄一の上告理由第一点ないし第三点、上告代理人鍛治利一名義同吉田賢三の上告理由第一点について。

本件土地は上告会社の設立前に上告会社の発起人組合が、上告会社の営業の目的たる映画館の敷地とするため、右発起人組合の代表者である被上告人名義で国から買受けたものであることは上告人の自認するところであるが、右土地の売買契約については上告会社の原始定款に何らの記載のないことは原判決の適法に確定したところである。然らば右売買契約は上告会社の発起人組合の代表者である被上告人が設立中の上告会社のため、会社の設立を条件として財産取得を約束したものと解し、これについて商法一六八条一項六号による定款の記載がなされていないから、右売買契約は上告会社に対して効力を有しないとした原審の判断は相当である。論旨は、設立後の会社は右財産譲受の権利があるというが、会社設立後の特別決議により財産取得契約がなされたなどの事実は原審で主張判断のないところであるし、また、財産引受契約の価額が適正であれば、原始定款の記載がなくともその契約の効力の妨げとならないとの所論は独自の見解であつて採るをえない。更に所論は違憲をいう点もあるが、その実質は単に商法一六八条一項六号の解釈適用を非難するだけのものに帰し、違憲の主張は前提を欠き採用できない。

よつて、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 池田克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一 裁判官 山田作之助)

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